SAGARDOA
バスクりんご酒とは?
スペイン・バスク地方で作られるりんごを原料とした醸造酒、ナチュラルシードラを”バスクりんご酒”と呼んでいます。
スペインの北部、フランスとの国境に位置するバスク地方でポピュラーなりんご酒。
バスク語ではSagardoa(サガルドア)、スペイン語でSidra(シードラ)と言い、地域で愛される地酒です。
バスクりんご酒を飲む会企画部では、「シードル」の”甘くてしゅわしゅわのりんごのお酒”というイメージから一歩離れて紹介したいという思いから、シードラをあえて「バスクりんご酒」と呼ぶことにしました。
企画部では、まずは本来のりんご酒の姿である、ナチュラルタイプのりんご酒に限ってご紹介をしていきたいと思っています。
バスクりんご酒
スペインでりんご酒といえばアストゥリアスが有名ですが、しかしバスクでも6世紀の書物にりんご酒の記述が残り、それ以降りんご酒が日常的に飲まれていた記録が残っています。
りんご酒は、主にワインの流通が難しかったバスク地方山間部のお酒でした。
この当時、ワインといえばりんごから作るもの、と認識していた村も多数あったとか。ぶどうから作るワインは、山間部の孤立した村々では手に入りにくい貴重品だったのです。
バスクりんご酒の中心地と呼ばれる、バスク、ドノスティア・サンセバスチャンの南に位置するAstigarraga(アスティガラガ)は、2011年のデータによるとヨーロッパで最もりんご酒醸造所の密度の高い村(面積、人口対比)です。
面積約12km²(東京ドーム約3個分)の小さな村アスティガラガに、実に21軒もの醸造所が存在します。
バスクりんご酒は炭酸ガスや糖の添加を行わず、りんごのみを原料とし、破砕→発酵というシンプルな工程で作られるアルコール度4.5度~のお酒です。
バスクりんご酒の醸造法
地域や生産者によって違いがありますが、下記が一般的なバスクりんご酒の醸造法です。
<<収穫>>
りんごが十分な糖度を有する秋に収穫が行われます。
バスクのナチュラルりんご酒に向くりんごとは、
1.十分な糖度がある(アルコール生成に十分な度数)
2.十分な酸度がある(変色を防ぐ)
3.十分な苦味(渋み)がある(ボディを構成するタンニンとなる)
<<洗浄>>
収穫したりんごを水で洗浄します。
<<破砕>>
皮、種ごと実を砕きます。
現在多くの醸造所は衛生面・製造量の関係からステンレス製の破砕機を使用していますが、手作業でりんご酒を製造している一部の醸造所では、木の桶にりんごを入れ、木製の杵でりんごをつぶす伝統的な製法を守っています。
<<マセレーション>>
一定期間果汁と果肉を触れさせ味わいに深みを持たせます。
<<プレス>>
圧搾機にかけ果汁を搾り取ります。
<<清澄>>
必要に応じ清澄を行います。ゼラチンなどが一般的です。
<<発酵>>
アルコール発酵・マロラクティック発酵を行います。
<<澱引き>>
沈殿した固形物を抜き取ります。液体を安定させる効果があります。
<<ボトリング>>
バスクりんご酒の旬
ボトリングされたバスクりんご酒は通年飲むことができますが、本来の旬は1月の2週目以降から4月ごろまで、大樽から直接注がれる新酒を楽しむことができます。
「Txotx」チョッツと呼ばれる新酒の行事は、新しい年のりんご酒の口開けを祝うものですが、本来は地元の人々が新年にそれぞれ懇意にしている醸造所へ赴き、その年のりんご酒の出来を味見する、または好みの味わいの樽を見つける(樽ごとに味わいに差ができるそう)ための習慣だったそうです。
現在では新酒の祝いとして、各醸造所が有力者や有名人を招き盛大に「Txotx」が行われています。
バスクりんご酒の飲み方
本来ボトリングされる習慣のなかったバスクりんご酒は、醸造所の発酵用大樽の蛇口から直接グラスに注がれ飲まれてきました。
バスク語でKupela(クペラ)と呼ばれる木製の大樽から勢い良くほとばしるりんご酒を寸胴のグラス側面で受け、泡立たせ3cmほど注ぎ、数口で飲みきるのが伝統のスタイル。
ボトルの場合は高みから注ぐことで泡立たせます。(エスカンシアード)
アスティアサラン醸造所の木製クペラ
バスクりんご酒の作り方と飲み方(動画)
アスティアサラン醸造所が、りんご酒の醸造、高みからのエスカンシアード、テーブル上のエスカンシアードの動画を作ってくれました。
バスクりんご酒と合わせる食事
バスクりんご酒を提供する醸造所や専門店に「必ずある」定番メニューはこちらです。
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Pimientos Fritos しし唐の素揚げ
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Anchoas fritas いわしの素揚げ
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Queso, Membrillo y Nuez イディアサバルチーズとメンブリージョ(マルメロのジャム)、くるみ
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Tortilla de Bacalao塩鱈のオムレツ
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Bacalao frito 塩鱈のフライ
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Txuleton 牛赤身肉の炭火焼
バスクりんご酒の酸味と苦味と非常に相性が良いのが揚げ物、そして牛肉です。
余計な甘みのないナチュラルタイプのりんご酒は様々なお料理と合わせて飲むことができ、飽きのこない味わいです。
アルコール度数も4.5℃から6度程度で、食中の飲み物としてぴったりです。